盲検化

 どのような研究でも結果に対してバイアス(bias;偏り)がかかる可能性は あります。バイアスとは偶然ではなく、同じ手順で同じ対象で研究するかぎりあ る程度再発し得るものです。このバイアスは、対象の選択から始まって、対象群 と介入群への割り付け、曝露状態や結果の評価、データの解析などあらゆる時点 で起こり得ます。対象の選択・割り付けでのバイアスを避ける方法には無作為化 があります。しかし、いくら割り付けを無作為化しても、検査所見などを評価す る人が先入観を持って判断したり、被験者が対照群か実験群かを知ることでコン プライアンスなどの影響が出るのでは客観的でバイアスの少ない研究とはいえま せん。そこで盲検化 blinding という方法が行われる訳です。(最近では盲検化 と言わずマスキング masking とも言います。)盲検化とはどちらの群であるか 、どちらの治療法であるかなどをまさに目隠しすることです。( 無作為化 と混同している人もいますが、厳密には異なった概念です。)
 盲検化の種類には被験者だけには知らせない「一重盲検化 single blinding 」と被験者と測定者の両者が知らない「二重盲検化 double blinding」、結果 を分析する分析者さえも知らされない「三重盲検化 triple blinding」がありま す。また、研究のどの時点で行うかにより、どちらの群に割り振るのかを目隠し する盲検化割り付けや、治療内容がどちらかわからなくする盲検化治療、測定評 価の際にわからないようにする盲検化評価などに分類することもあります。
 いずれの場合でも、知り得たことや先入観が評価や測定を左右する時には盲 検化が行われます。しかし、盲検化することはインフォームド・コンセントをし ないということではなく、治療過程に関する必要な情報は与えなければなりませ ん。また、緊急の場合にはどのような適切な対処をしたか記録につけ、被験者の 利益を優先させなければなりません。           

   

UPDATE:10/May/10

© S. HARANO, MD,PhD,MPH