交 絡
ある危険因子の曝露と転帰結果の関連を考える際に、その危険因子に付随し
表には現れていないその他の危険因子が直接転帰に関連し、観察している因子は
直接的には関連していない場合があります。これを交絡 confounding といいま
す。例えば、喫煙と癌の関係を調べる時、実際には付随する他の因子が直接に癌
の発生と関係あるような場合です。
このように曝露と転帰に係わる因子を交絡因子 confounder(またはconfounding
factor)といいますが、これは曝露と転帰の因果関係の過程で生じるものでは
ないことに注意する必要があります。また、対象の選択や判定上で問題となるバ
イアスとも異なります。観察的研究ではこの交絡が起こる可能性が常に存在しま
す。つまり、比較したい群はコホート研究での曝露状況や患者対照研究の転帰状
況以外の方法で区別される可能性があるということです。このような群を区別す
る方法をどのようにしたらよいかは必ずしもいつもわかっているとはかぎりませ
ん。これらを避けるためには研究デザインと結果の分析に工夫が必要となってき
ます。
研究デザインにおける交絡のコントロール
- 限定:単純に交絡因子の影響を除外する方法としては、対象集団を制限するこ
とです。例えば、喫煙と肺癌の関係を研究する場合、対象者の職業的曝露が交絡
因子となる可能性があります。これを防ぐには影響する因子が発生する産業に従
事していない者に限定して対象者とすることです。
- マッチング:患者対照試験でよく用いられる手技ですが、症例と対照の間で交
絡因子となりそうな要因を一致 match させることで交絡因子の影響を最小限に
することです。例えば、虚血性心疾患の発生に年齢差がある場合には、症例と対
照の年齢が一致するように対応させて対象者を設定します。
- 無作為化:まったく交絡因子が不明の時に唯一有効な手段が無作為化です。
無作為化
については該当する項を参照にしてください。
データ分析における交絡のコントロール
- 層化:対象者が交絡因子によりサブグループに分割できる場合、対象者をひと
まとめにして分析せずに、そのサブグループこどに分けて分析します。これを層
化といいます。例えば、飲酒と肝障害の関連を見る場合に、年齢と飲酒量が影響
するとすると、飲酒量と年齢によりいくつものグループに分けて、おのおのにつ
いて曝露群と対照群を比較します。
- 多変量解析:交絡因子を扱うもっとも有力な分析方法が多変量解析です。これ
は、統計学的モデルを用いて交絡因子も変数として含めることで、それぞれの変
数の影響を見ていく方法です。多変量解析には、重回帰分析、正準相関分析、判
別分析、主成分分析、因子分析、共分散分析など目的に応じて様々な方法があり
ます。
UPDATE:10/May/10'
© S. HARANO, MD,PhD,MPH