2つの生存率の比較

 あるひとつの群の死亡率(逆にいえば生存率)の時間経過による差を知りたい時には、ひとつの生存曲線における対応する時間の値を比較すればよいのですが、異なった2群の間での生存曲線のプロットに差があるか否かを比較検討するにはどうしたらよいでしょうか。
 考えられる方法のひとつとしては、ある一時点、例えば、診断後5年後の生存患者の割合を比較することでしょう。この方法は簡単ではありますが、残念ながら利用できる情報のごくわずかな部分しか使用していないことになります。患者の半数が死亡するまでの時間、つまり「50%生存期間(あるいは生存中央値 median survival)」を見る場合にも同様なことが言えますが、この場合には「平均生存時間 mean survival time」とは異なり、すべての患者が死亡する前に推定することができます。
 これに対して、全期間を追跡して得られた情報を用いる方法に「ログランク検定 logrank test」があります。
 ログランク検定の原理を理解するために、死亡率の高いある手術をした2群の患者(正常体重群と栄養不良群)の生存を手術後の経過日数を追って評価する研究を考えてみましょう。各群の生存を比較するために、追跡日ごとに2×2分割表を書いてみます。下記は術後10日目の表です。

術後10日目 栄養不良群 正常体重群
10日目の当初に生存していた総人数 N M
10日目のその日の内に死亡した人数 a b
10日目の終わりに生存していた人数 N − a M − b

 栄養不良群では10日目その日の内に死亡するリスクは a/Nとなります。同様に、正常体重群では10日その日の内に死亡するリスクはb/Mとなります。そこで、栄養不良群では、死亡の相対危険度は、
RR=(a/N)/(b/M)
となります。
 カイ自乗検定を用いることで、ある日における死亡のリスク差が偶然によって起こったか否かを決めることができます。ログランク検定とは、基本的にはすべての日にわたる相対危険度を平均して、この平均相対危険度(RR)のカイ自乗検定を行うものです。予後因子(例えば、ここでは栄養状態)と死亡との関連の強さ strength of the association はRRの値で示すことができます。すなわち、RRが1より大きかったら予後因子(ここでは栄養不良)の存在は死亡リスクの増加と関連があり、逆に1より小さい値は予後因子の存在が死亡リスクを減少させるような好ましいものであることを示しています。

   

UPDATE:10/May/10'

© S. HARANO, MD,PhD,MPH