予後の判定

 臨床所見や診断結果に基づいて、予後良好の者か予後不良の者かというように、患者を異なった予後群に割り振れれば今後の経過の見通しに有効と考えられるでしょう。
 予後群の作り方のひとつとして、すべての変数をカテゴリーに変換し、それぞれのレベルの変数の組み合わせにおける患者の生存状態を比較する方法があります。似かよった予後を持つカテゴリーを順次組み合わせ、最終的には3ないし4つのはっきり判別できるような予後群の組になるようにします。このアプローチで不利な点は、ヘモグロビンのような連続変数をいかにカテゴリー化するか、ということです。また、カテゴリー化するには近年になり生存分析でも利用されるようになったCART(分類と回帰樹 Classification And Regression Tree)法を用いるのが最適ですが、不適切なカット・ポイントを選んでしまうことにより大切な情報を失うおそれも出てきます。
 その他の方法としては、線形予測因子の値の分布から予後群を作ることもできます。例えば、観察された線形予測因子の分布で下3分の1と上3分の1で区切り、良好・中間・不良という予後群を定義することもできます。

検証

 あるデータ・セットに対する予後指標が作成できたら、その成績《できばえ》を検証する必要が出てきます。つまり、予後良好群と不良群ない者を実際にどのくらいよく判別することができるのだろうか、ということです。予後指標の作成に際しては、元々のデータ、つまり「調整群」に合わせているために、一般的に、それ以外のデータ・セットでは予後指標がそれほどうまく適合しないことになるでしょう。そこで実際の成績は次の数々の方法で検証することとなります。ひとつの方法として、別個に「検証」患者群を用意することがあります。つまり、予後指標を交差検証するという方法です。もうひとつのアプローチとしては、「縮小 shrinkage」として知られているプロセスを用いて、調整群での成績を別個の検証群で期待されるレベルにまで落とすものです。これは患者数がまれな疾患などでは有用な方法ですが、そのデータ・セットでの予後指標の回帰係数あたりの死亡数が少なくとも20〜30であれば、この方法はあまり有効ではないと考えられます。

判別

 対となる対象者ごとに予後指標と生存時間の相対的序列が一致していることを確かめる方法もあります。つまり、対となる対象者それぞれを比較して予後が良好ならば生存時間も長くなるというように、ほとんどの対で予後指標に一致した序列となっていくことで予後群が適切であったと判断することが可能となります。ただし、この手法では計算に努力を要するようになります。

   

UPDATE:10/May/10'

© S. HARANO, MD,PhD,MPH