Ｎ-of-１試験

　Ｎ-of-１のＮとはnumberの略で、Ｎ-of-１試験は１人を対象とした試験デザインです。つまり、１人の患者に対してrandomにいろいろな処置を与えて、それぞれの処置の効果を統計学的に評価する研究デザインのことで、臨床疫学の分野で少ない対象者で比較試験を行うために開発された自己対象デザインです。
　まず、当該患者に対して、２つの処置のどちらかを無作為に割り付けします。そして、その効果を評価して先行処置の影響が消失したところでもう一方の処置を行い、さらにその効果を評価します。この時、どちらの処置を施したのか盲検化する必要があり、評価者とは別の第三者により無作為割り付けが保証されなくてはなりません。１クールの試験を実施した後、前回とは独立して同一患者に対して再び無作為割り付けをして試験を繰り返します。この試験が適用できる条件は、疾患が臨床的に安定していること、比較的早期に結果がでること、介入を解消すると比較的早くに元の状態に戻ること、です。また、データ数が少ないので、この試験での統計解析にはt検定よりもランダム検定が適しているといえます。
　他の患者内比較研究である交差比較試験 cross-over trial と異なるのは、対象者を群に分類して比較しないことです。

UPDATE:10/May/10'