生存曲線

 観察研究において観察開始より死亡、つまり エンドポイント までの期間を調べて、累積生存率を計算することでその効果を解析する方法を生存分析と言います。この生存分析の方法にはいくつか種類がありますが、症例数が50程度以上では生命保険数理法 acturial method またはカトラー・エデラー法 Cutler Ederer method が用いられるのに対し、症例が少ない時にはカプラン・マイヤー法 Kaplan-Meier method が用いられます。生存分析を利用して治療後のある期間における生存確率(例えば、5年生存率)を求めることができます。
 観察開始より一定期間毎(例えば、週や月)にある患者集団の生存割合を調べてこれをプロットしていくと、その変化(減少)を視覚的にとらえることができます。このようにしてプロットしたものを生存曲線 survival curve と呼びます。 誰かが死亡するまでは生存している患者の数は一定で有るために、プロットした線は「階段状」となります。つまり、それぞれの階段は1人かそれ以上の死亡を表しています。

 患者の数が増えると、プロットの「階段」はより少なくなり、やがてきれいな曲線となり、真の生存率に近似していきます。
 現実的には観察対象となる患者を一時に集めることは不可能で、数年に亘って集めることになります。このようにして集めた患者の中には、観察対象としている死因以外で、何らかの理由によりそれ以上追跡することができなくなる者もおります。このような場合を「打ち切り censoring(広義)」と呼びます。このセンサリングとなる理由には以下の3つがあります。
 @研究対象以外の死因での死亡(競合リスクと言います)
 A移動その他の理由による観察中断
 B観察期間終了による打ち切り
 このうち、@とAでは当然それ以上追跡することも、対象となる死因による死亡として数えることもできないので、「脱落(または観察終了) withdrawal 」として追跡期間中に追跡を見失ったかのように処理します。ただし、競合リスクとなる死因は観察対象としている死因に比べてリスクの高いものではないと仮定します。これに対してBの場合では、観察期間の最後で未だ生存している患者には将来何が起こるかを知ることはできませんので、観察対象となる死因で死亡するかもわかりません。これを「中途打ち切り censoring(狭義)」されたと言います。

   

UPDATE:10/May/10'

© S. HARANO, MD,PhD,MPH